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新作紹介:「T2 Trainspotting」

90年代ポップ・カルチャーの代名詞で社会現象まで引き起こした映画「トレインスポッティング」(96)。およそ20年の時を経てその続編が4月8日より公開される。主演のユアン・マクレガーをはじめ監督のダニー・ボイル、脚本のジョン・ホッジとオリジナルのスタッフ、キャストが再集結した。本国では1月27日に封切られ、最初の3日間で7億円超えという記録的な興行成績を樹立し、新たな「トレスポ」ブームが巻き起こっているという。

最初の映画の封切りから21年が過ぎていることに対し、ボイル監督は「一般的な常識で考えると続編を作るには遅すぎる気がした」と語る。しかし10年前では俳優たちがそれほど変わっていないこと、むしろ20年経つと「さすがに長く、その時間の重さが実感できる。みんなは今の容姿を受け入れ、以前の容姿と比べられることも覚悟している」、「現在の自分の立場に対する自分の責任も認めている。それこそが、今回のテーマでもある」と続けた。

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確かに「トレインスポッティング」は一つの代名詞といえるだろう。たとえばポップカルチャーについて会話するとき、あるいは何らかの色彩、音楽、ジャンキーたちについて語るとき、「そう、トレスポ的な」といった具合にこの作品のタイトルを出しただけでだいたいのニュアンスがつかめてしまう。間違いなく90年代の名作の一つであり、これからもそうであり続けるだろう。

そんな伝説的映画の続編である。実際のところ、当時熱狂した「トレスポ」ファンであればあるほど、本作を観ることに抵抗があるかもしれないし、さほど期待しないかもしれない。なぜならトレスポは青春映画の象徴なのだ。20年後の彼らのことが気になったとしてもあの頃の「トレスポ」が戻ってくるわけではない。しかしそれでも、20年前のラストシーンでみたあのレントン(ユアン・マクレガー)のぼやけた輪郭がみえたとき、懐かしい面々とシニカルな台詞、気分を高揚させる音楽が流れ出したとき、この作品との再会に興奮せずにはいられないだろう。

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1作目の記憶をトレースしながらストーリーは展開する。あのときと同じ街角を歩くスパッド(ユエン・ブレムナー)が思い出す風景と観客のそれは同じだ。耳をすませばトレスポを語るうえで欠かせないUnderworldの「ボーン・スリッピー」をアップデートした「スロー・スリッピー」が流れ込んでくる。

20年経っても相変わらず破天荒な彼らを懐かしく思う一方で彼らが確かに「大人」になったことを感じさせるのは本作が1作目の単なる焼き直しではないからだ。
1作目では彼らと大人との間に明確な隔たりが存在していた。若者のコミュニティ内での結束やつながり、あるいはその狭い世界をテーマとして物語が展開するなかで、レントンはそこを去り、大人になることを選択するという結末だった。対して本作ではより世界が広がりを持っている。彼らはまっとうかどうかはさておき仕事をして、うまくいっているかどうかはさておき家族がいる。自分のことばかり考えていた20年前とは違って彼らは多少なりともそれぞれに責任を背負い、社会と関わらざるを得ない状況にある。しかしそれもうまくやれているわけではない。若者でもなければ立派な大人でもない、そんなやり場のない彼らはやはり私たちの知る彼らだ。

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年月を経て変わったのは容姿以外にもある。たとえばテクノロジーの進化だ。一仕事終えて有頂天な彼らはスマホを手に自撮りをしてSNSに投稿する。レントンはSNS漬けになった現代人を中毒者だと揶揄する。スパッドが得意としたサインの筆跡を真似る特技は今や役立たずだ。電子取引、セキュリティの向上、暗号化。これらの進化は映画自体の表現としても隠喩的に登場する。やり取りするメッセージがスクリーン上に浮かぶこと、スパッドが空にサインを描く仕草をするとその文字が映し出されること、マンションの階数が建物の外壁に表示されること。そういった点においては前作のシンプルなものに比べると凝った映像がいくつも観られるが、それもまた20年間という月日のなかで映画の表現自体が日々進化を続け、これが"現代"のトレスポだということを主張しているかのようだ。

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彼らがそれぞれに選んだ人生の結果を私たちは知ることになる。しかしそれを抜きにしてもこの続編を観る価値は大いにありうる。なぜならば本作はトレスポの続編であると同時に完結でもあるからだ。もちろんこれからまた20年後にボイル監督は続編を製作するかもしれない。しかしその可能性は低いように思える。今回トレスポが再び戻ってきた意味はその物語を終わらせるためではないだろうかと思えるほど完璧な終着点をみせた本作。続編としながらも1作目とはまた違う「Trainspotting」であることは間違いない。

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T2 トレインスポッティング
原題:T2: Trainspotting
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル、ユエン・ブレムナー
日本公開:2017年4月8日(土)よりロードショー
原作:アーヴィン・ウェルシュ

公式HP:t2trainspotting.jp

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