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試写室と劇場からお送り致します

獣道

神さまが手のひらサイズだということを、私は知りませんでした。

 

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(C)third window films

どうなんでしょうか。

百通りの宗教があるとすれば神さまのサイズも百通りあるのではないかと寛容なポーズをとる私です。

 

強烈でした。主人公、愛衣ちゃんの母親役を演じる広田レオナさんの悩ましげなダンス...などと言ったら怒られそうですね。

なにせ終盤までに13個かいくらかの宗教に傾倒なさるのですから。あれは神さまに捧げる神聖なダンスです。

 

私はかなり久々に須賀健太くんの演技を拝見したのですが、22歳の彼が放つ今の雰囲気と今回演じたもう一人の主人公である亮太の役柄が非常にマッチしていて、私は何度も心のなかで「こういう須賀くんを観たかった!万歳!」と叫ばずにはいられませんでした。

 

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(C)third window films

劇中ではわりとポンポン年月が過ぎるので、時間経過を把握するのが難しいのですが、喧嘩するときでも街をうろつくときでも大方、亮太は制服を着ているので「まだ3年以上は過ぎていないのか」と確認ができます。

最近は私服通学が許可されている学校も増えているようですが、やはり制服というのは所属を表す便利な記号ですよね。それでいて着崩し方ひとつ、アレンジひとつで(しちゃダメでしょうけど)その人が自分をどう見せたいのかという指標になりますから。

 

そう考えると、亮太というキャラクターは本気の不良でもなく、かといって真面目に学校へ通って放課後は部活動に明け暮れるような普通の学生というわけでもなく。

私は昔から疑問なのですが、不良の方って、アンチな姿勢でありながら意外にも毎日学校には出席していたりしますよね。何かしら不良のなかにも種別というか棲み分けがあったり、ルールがあるのでしょうね。

 

亮太はミステリアスボーイです。喧嘩はそれなりに強そうだしヤンキーの長からも「おもしれえ奴だな」となかなかの高評価。口数は少なく、それでいて愛衣ちゃんのことがずっと好き。一途。

 

そうです。メインビジュアルからは想像もつかない、というのは言い過ぎではありますが、冒頭からずっと亮太が主張しているように、これは亮太の恋物語です。

 

たまに私服が見れたらラッキー、というぐらい常に制服の亮太とは対照的に容姿を含め環境がどんどん様変わりしていく愛衣ちゃん。住まいは以下のように転々と、

宗教施設→ヤンキー一家→ごく普通の家庭→13個目の宗教にハマった母親が待ち受ける実家...

 

さらに職業は万引き犯に始まり水商売にデリヘル嬢、AV女優と手を替え品を替え、その内容だけを聞くと、痛ましい、かわいそう、堕ちていくだけの人生なのね、といったネガティブな印象を持たれてしまうかもしれませんが、本作では彼女を「かわいそう」に描こうとしているわけではないように思えます。

むしろ彼女は生き抜いていくために、自分の居場所を探すために、獣道を歩み続けるたいへんタフなガールです。

 

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(C)third window films

うわ~!近い近い

そもそも彼女のタフさは初めて通う中学校の転校初日から発揮されていました。

教室で教師に自己紹介を求められた愛衣ちゃんは、黒板に「アナンダ」(謎宗教の洗礼名)と大きく書いて、

「私はアナンダ。好きなものは神さま」

かなりはきはきと答えます。

 

声は通らないし好きなものなんてたくさんあって選べない、という風にぐずぐずしがちな私とは大違いです。

 

本作の舞台はとある地方都市....富士山が見えるので何となく察しはつくのですが。

 

私は地方都市どころかもっと田舎の出身ですが、それでも共感できたのが、劇中の

「え、おまえ西高?◯◯先輩知ってる?」

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(C)third window films

このやり取りは×10回ぐらいありましたけど、ああ、懐かしいな....と同時に学生時代の思い出も蘇り、おそらく変な表情になっていました。

亮太が人付き合いをしないせいなのか、それとも尋ねた方の頭がシンナーでレロレロになっているせいなのか分かりませんが、亮太同様に私も当時こういうやり取りになるとほとんどの場合「いや...ちょっと分かんないですね」を繰り返しており、その瞬間に垣間見える相手の微妙な反応を久々に思い出しました。 

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 (C)third window films

 個人的には、ヤンキーの世界に足を踏み入れたことはありませんが、通っていた中学にはちらほらそういう人たちがいました。

「もうすぐ○○さんが少年院から出てくるらしい…」

という噂に戦慄してみたり、あるいは部活動の先輩のひとりに、毎日学校に出席するタイプの不良をやっている人がいて、放課後は竹刀をたまにアレに持ち替えていました。

 

しかし気がつくと彼らはいつの間にか大人になって、結婚して子どもがいて、FacebookInstagramには微笑ましい家族写真、キャプションには可愛らしい絵文字を用いて、さらにはタグまで活用している、と言う風にすっかり良いお父さん、お母さん。

むしろ私のように不良からは「なんかよく分からんから触れないでおこう」と一定の距離を置かれ、かと言って真面目に学生生活を送ったともいえない自分の方がまだまだ人生旅路の途中みたいな状況であります。

 

ですから、恋愛にせよ進路にせよ何でも良いですけど、いつの間にか友だちが別の方向を歩み始めて、自分だけが置いてけぼりをくらったような気になって焦ってしまう吉村界人くん演じるヤクザまがいの彼には共感できる部分があります。

焦ってもしょうがないし、どちらかというと身から出た錆とはいえ

「置いていかないでよ!」

と泣き叫びながら亮太の背中をみつめる姿に涙腺が刺激された人も多いのではないでしょうか。

 

 

 

ぜひともこの夏とびきり激しい獣のような恋愛映画を、ご覧ください。

 

 


映画『獣道』予告編 / Love & Other Cults - Trailer

 

http://www.kemono-michi.com/

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