映画館で観た映画(異邦人 デジタル復元版)
とても楽しみにしていた『異邦人 デジタル復元版』。
カミュの原作も好きなのだが、あの!ルキノ・ヴィスコンティが映画化していて、しかも主演はマルチェロ・マストロヤンニ、恋人役にアンナ・カリーナ。とにかく豪華すぎる。
原作が好きといったものの、読んだのがだいぶ前なうえ、再読というのをなかなかやらないので細かいディティールは覚えていない。
ただおおまかなあらすじは覚えているので、「映像化するとこうなるのか」と半分感心しながらみていた。
もう暑くてしょうがない、かなわん、という描写が重要かつキーでもあるのだが、映像化によってそれがかなりリアルに描写されている。
服が汗でびしょびしょになり、常にハンカチで拭いていないといけないぐらいの暑さで、それがまた人を苛立たせるんだろうなというのが伝わってくる。
とにかく裁判のシーンが圧巻。とくに被告人であるムルソーを糾弾する弁護士の迫力がすごくて圧倒されてしまった。裁判シーンといえばベロッキオの『シチリアーノ 裏切りの美学』もすごかった。イタリア映画にはそういう系譜があるのだろうか…。
ラストの司祭と押し問答するシーンもムルソーの鬼気迫る演技が良い。最低限の光で撮ったのであろう暗がりにぼんやり浮かび上がる表情も印象的だった。
ムルソーはただただ自分の信条に正直に生きているだけなのに、殺人というレッテルが貼られた瞬間、「そういえばあの人ああだったから…」と理由になってしまうのが怖いところ。陪審員制度であんなふうに印象操作されたらたまったものではない。さすがに多少は誇張表現ではあると思うのだが(そうであってほしい)、人間って実はそうやってイメージで人を断罪するところがあるでしょう、というのをあぶりだしていた。
これを機にまた原作も読み返そうと思う。
しかし、欲を言うならもっと大きいスクリーンで観たかった…。