日記2019~

こんにちは

映画館でみた映画(天国にちがいない)

前回『はちどり』を観に行った際に映画館で偶然居合わせた友人が、「スレイマンの新作、あまり期待していなかったけどけっこう良かったよ」と言っていたので、新宿武蔵野館の水曜サービスデーを活用して『天国にちがいない』を観てきた。

 

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主役はパレスチナ人のエリア・スレイマン監督自身。ナザレ、パリ、ニューヨークと3つの都市をめぐるというただそれだけの話なのだが、今年みた映画のなかで上位に入るぐらいとても気に入った!

 

さいきん気づいたのだが、自分は「影」信者(?)みたいなところがあって、室内のシーンなどで影がどう映っているのかについ目がいくのだが、本作では序盤に室内でスレイマンが植物に水を与えるシーンがあり、その際の影の使い方がとても良いと思った。

というより、本編(の前にキリスト教のコメディっぽいエピソードが3分ぐらいある)が始まると、まずスレイマンが家の外にある石のベンチに腰掛けて煙草をくゆらせながら白濁色のお酒(ネットで検索したところ、「アラック」というものかもしれない)を飲んでいるのだが、これをみた瞬間「わたしもこういう生き方をしたい…」と強く思った。

ちなみにお酒といえば、後半あたりのパレスチナ人は変わっている、ふつうは忘れたいから酒を飲むのにパレスチナ人は忘れないために酒を飲む」というくだりが印象的だった。

 

いきなり読書の話になるが、わたしは普段エッセイをあまり読まない。作者のつくりあげた世界観のほうに興味があるのであって、その作者が何を考えているかなどは創作物を読めばそこからくみ取ることができるし、わざわざ作者の日常をみたいというふうにはあまり思わないのだ。

ただ、例外もいくつかあって、例えば森茉莉のように、エッセイなのに現実と妄想のはざまにあるような描き方をしているものは好きだ。

この映画はまさにそれと似ていて、監督の目を通してみる各国の様子を皮肉とユーモア、そしてときに感じる批判性をもって描いたエッセイのようでありながら、現実と創作のはざまにあるような画の見せ方、構図などどれをとっても素晴らしい。

レイマンが描く各国の印象をみていると、なんとなくパリは東京に似ているのかもしれないと思った。これは普段あまり感じないことなので新しい発見だった。

ぜひ東京も旅してもらいたいものだ…。

 

ところでこの映画のタイトル、『天国にちがいない』は原題が『It Must Be Heaven』なのでそのままではあるのだが…

「heaven」は英語だとすんなり受け入れられるのだが、日本語で「天国」と言われると、なぜかチープで楽観的な印象を受ける。予告編をみたときは良さそうだな、と思っていたが、どうしてもそこが引っ掛かっていたので、友人の後押しがなければ『クラッシュ』を優先して観に行っていたであろう。

『It Must Be Heaven』、実に哲学的で叙情的な良い映画だった。ことさら彼がパレスチナ人ということには触れないが、そのアイデンティティを感じさせるものを時折垣間見たように思う。

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